喘息の発作を繰り返さないためには、日常生活での予防策が極めて重要です。特に子どもやご自身の幼少期からの喘息既往がある場合、急な生活環境の変化や季節の変わり目に不安を抱えることも多いでしょう。発作が起きそうなときや、起こってしまったときに、自分や家族がどのように動けばよいのかを解説します。万が一のための備えとして、救急車を呼ぶ基準や日常の予防法をきちんと理解しておきましょう。

まずは落ち着いて!喘息発作のサインと重症度の見分け方

発作が起こったときに最も大切なのは、周りの人も本人も慌てずに状況を我が身のこととして受け止め、冷静に判断することです。生理学的には可逆性の気道狭窄と気道過敏性の亢進が特徴であり、早期のサインを見逃さないことが重要です。

喘息発作でみられる主な症状

気管支喘息の臨床的特徴は、繰り返す咳、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、および呼吸困難です。発作は夜間や早朝に出やすいのが特徴です。なお、喘息の軽い発作では、咳や喘鳴がなくても、息苦しさだけを感じる場合があります。咳や喘鳴がなくても、息苦しさを感じたら軽めの発作を起こしていると考えて対処する必要があります。

発作の重症度を判断する3つの段階(小発作・中発作・大発作)

気管支喘息の発作重症度は、臨床症状と経皮的酸素飽和度(SpO2)で迅速に判定することができます。

  1. 小発作:苦しいですが、横になれる状態です。SpO2≧96%の場合を示します。
  2. 中発作:苦しくて横になれない状態です。SpO2が91〜95%程度の場合を示します。
  3. 大発作:息苦しさのために歩けない、話せない状態です。SpO2≦90%の場合を示します。

これらの区分に加え、SpO2≦90%でチアノーゼ・意識障害・呼吸減弱を伴う場合は、最も危険な「重篤な発作」と判定されます。なお、上記の数値はあくまで目安であり、実際の重症度判定や対応は自己判断に頼らず、必ず医師の指示や「喘息アクションプラン」に従ってください。判断に迷う場合は、数値にかかわらず速やかに医療機関を受診するか救急車を呼んでください。

【緊急度別】喘息発作が起きたときの対処法

発作が起こったら、まず身体を安静にし、症状の強さに合わせて適切なステップを踏んでいきます。症状の早期改善を図るため、迷わずに対処することが気道閉塞の急速な悪化防止につながります。

ステップ1:楽な姿勢をとり呼吸を整える

息苦しさを感じたら、まずは行っている動作を中断し、楽な姿勢で休憩します。椅子に座って机に腕を置き、前かがみになる体勢は、呼吸補助筋が働き、胸や肩周りがリラックスして楽になる姿勢のひとつです。あわせて腹式呼吸を行います。腹式呼吸は、鼻から息を吸いお腹を大きく膨らませ、軽く息を止めたら、口をすぼめてゆっくり息を吐き切る方法です。また、常温または温かい飲み物で水分補給をすると良いでしょう。カフェインには気道をわずかに広げる作用があるとする報告もありますが、その効果は限定的で、発作治療薬の代わりにはなりません。水分補給を目的に常温または温かい飲み物を選び、冷たい飲み物や炭酸飲料は気道の粘膜を刺激するため避けます。

ステップ2:【薬がある場合】発作治療薬(リリーバー)を使用する

医師から処方されている気管支拡張薬などの発作治療薬(リリーバー)は、発作が悪化する前に迷わず吸入します。吸入の正しい方法は、息を吐ききってから吸入器をくわえ、薬剤を放出するタイミングに合わせてゆっくり深く息を吸い込みます。吸入後は数秒間息を止め、そのあとにゆっくり息を吐き出します。吸入薬の種類によっては口の中に薬剤が残ることがあるため、うがいをしておくと安心です(特にステロイドを含む吸入薬を使用している場合は、口腔カンジダ症などの副作用予防のためうがいが重要です)。

ステップ3:症状の変化を確認し、追加対応を判断する

小発作の場合、気管支拡張薬を吸入後、楽な姿勢で15〜20分程度様子をみます。もし20〜30分経っても改善せず、中発作が続くようなら、短時間作用性β2刺激薬を20分おきに2〜3回吸入するなどのコントロールを行います。2回薬を吸入しても息苦しさがとれなかったら、20分後に3回目の薬を使用し、それでも治まらない場合や、呼吸の苦しさが十分に改善しない場合、息苦しくて眠れない、横になると余計に苦しくなる場合は、医療機関を受診します。

発作治療薬(リリーバー)がない場合はどうする?

もし、いつも使っている気管支拡張薬が手元になくて症状が改善しない場合は、まず行っている動作を中断し、楽な姿勢で安静にし、医療機関を受診すべきです。臨時の対応として、首や胸を温かいタオルで温めたり、加湿器で室内の湿度を上げたりすると、呼吸が楽に感じられる場合があります。お湯を沸かして蒸気を直接吸い込む方法は、やけどの危険があるうえ、発作そのものを改善する効果は医学的に確立されていないため行わないでください。空気が乾燥している場合は、加湿器を使うなど安全な方法で湿度を保ちましょう。これらはあくまで臨時の対応であり、症状の状況を見て速やかに医療機関を受診してください。

救急車を呼ぶ・すぐに医療機関を受診すべき危険なサイン

喘息発作は時に急速に悪化し、命に関わる状態になることがあります。特に手元の薬で症状が治まりきらないような場合には、我慢せずに放置せず、救急車を呼んだり、すぐに医療機関の救急外来を受診する必要があります。

救急車を呼ぶべき症状のチェックリスト

以下の状態が見られる場合は、危険な大発作や重篤な発作の場合です。すぐに救急車を呼んでください。

  1. 歩くのがつらいほど呼吸がしんどい
  2. 息が続かず会話が途切れてしまう
  3. 顔色が明らかに悪い、または唇の色が紫がかって見える(チアノーゼ)
  4. 意識がはっきりしない、または呼びかけへの反応がにぶい
  5. 呼吸の音が弱々しくなる、呼吸が減弱している
  6. いつも使っている気管支拡張薬を吸入しても呼吸の苦しさが十分に改善しない

また、過去の病歴で「重篤な発作で気管挿管を行ったことがある」という場合は、再び発作を起こした時点ですぐに医療機関を受診するか、救急車を呼んで入院を考慮する重要な基準となります。

救急車を呼ぶか迷ったら?救急相談センター(#7119)の活用

「すぐに病院に行ったほうがいいのか」「救急車を呼んでもいいのか」と迷った場合は、救急安心センター事業(#7119)などの相談窓口を活用する方法があります(#7119は地域によっては利用できない場合があるため、お住まいの自治体の救急相談窓口をあらかじめ確認しておくと安心です)。医師や看護師が症状を聞き取り、緊急度や受診の必要性をアドバイスしてくれます。ただし、息ができない、意識がはっきりしないなどの明らかな緊急時は、相談をはさまずに直ちに119番通報を行ってください。

【年齢別】子どもの喘息発作で大人が注意すべきポイント

まだ自分の言葉で苦しさを伝えられない小さな子どもの場合、周りの大人が急な変化やサインを見逃さないことが何よりも大切です。

子ども特有の危険なサインを見逃さないで

子どもの発作では、呼吸が苦しくなると「陥没呼吸」がみられるのが特徴です。息を吸うときに、のどの下や肋骨の間、お腹などがペコペコと凹む様子を示します。また、急に機嫌が悪くなったり、ぐったりして動かなかったり、あやしても泣きやまない、水分補給ができないなどの状態は、自分で言葉を伝えられない子どもが出す非常に危険なサインです。これらのサインを見逃さず、すぐに医療機関を受診すべきです。

家庭でできる子どもの応急処置と安心させる工夫

子どもが発作を起こしたときは、周りの大人が慌てずに、優しく声をかけて安心させてあげることが大切です。子どもの不安や怖がる気持ちは、交感神経を刺激して症状をさらに悪化させる原因になります。姿勢は、縦抱きにするか、布団やクッションを当てて上体を起こした状態にしてあげると、呼吸がしやすくなります。衣服の胸や首元をゆるめ、常温の水やお湯を少しずつ飲ませてお口を潤すのも効果的です。

子どもの薬の使い方と注意点(吸入補助具の活用)

小さな子どもは、吸入薬をタイミングよくゆっくり深く吸い込むことができない場合があります。そのようなときは、医師と相談のうえ、吸入補助具であるスペーサーを活用するとよいでしょう。スペーサーを使うことで、吸入器から放出された薬剤がその中にとどまるため、自分の呼吸に合わせて無理なく薬を吸入することができます。そして、吸入後は必ずお口をすすぐか、うがいができない乳幼児の場合は水分を飲ませたり、湿ったガーゼでお口の中をゆっくりと拭き取ってあげて、薬剤が残らないようにしてください。

喘息発作を繰り返さないための日常生活での予防策

喘息の治療は、発作が起こったときだけに行うものではありません。症状が落ち着いているときでも気道の炎症は続いているため、日頃からの自己管理が発作予防につながります。

発作を予防する2種類の治療薬(コントローラーとリリーバー)

喘息の薬には、日常の炎症を抑えるために毎日使う「長期管理薬(コントローラー)」と、発作が起こったときに一時的に気道を広げる「発作治療薬(リリーバー)」があります。長期管理薬としては、吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などが用いられます。症状が落ち着いているときでも、自己判断でこれらの薬を中断してはいけません。気道の炎症を抑えるために、毎日の服薬や吸入を継続することが、発作を起こさないようにするために欠かせない基本です。

アレルゲンを遠ざける環境整備のポイント

ハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛などのアレルゲンは発作の引き金となります。家庭での環境整備として、以下のポイントを実施しましょう。

  1. 掃除機は週に2〜3回以上かけ、その後は床拭きも行うと効果的です。
  2. カーテンやソファーなどの布製品は定期的に洗濯します。
  3. 布団や枕カバーは週に1回以上洗濯し、布団は天日干しや布団乾燥機でしっかり乾燥させます。
  4. エアコンのフィルターは月に1回以上清掃します。
  5. 室内湿度は50〜60%を目安に保ち、加湿器を使う場合はカビの繁殖を防ぐため定期的に清掃します。
  6. 1日のうちに数回、短時間でも窓を開けて換気をします。就寝前に換気を行うと夜間の発作予防に効果的です。
  7. ペットを飼っている場合は、こまめなブラッシングと掃除を行い、寝室にはペットを入れないようにします。

また、タバコの煙は息苦しさを誘発する原因となるため、吸っている人は禁煙すべきです。新型タバコ(加熱式タバコ・電子タバコ)も吸わないようにすべきです。周りの受動喫煙も喘息状態の悪化をもたらすため、徹底して避けるようにしましょう。

感染症や気温差から気道を守る工夫

風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症は、喘息発作の大きな引き金になります。外出先から帰宅したら手洗い・うがいを行うことが、特に冬場や感染症が流行している時期は重要です。また、マスクの着用は冷たい空気から気道を守る効果が期待されます。室内外の温度差が大きくならないように、衣服や空調で温度管理をすることも考慮してください。

医師と相談して作成する「喘息アクションプラン」のすすめ

いざというときのために、家族と共に「喘息アクションプラン」を作っておくことをおすすめします。これは、症状の状態に合わせて「どのように薬を使うか」「どのタイミングで医療機関を受診するか」などをあらかじめ医師と書面で設定しておく計画です。これがあれば、緊急時にも家族が迷わずに行動でき、不安が大幅に軽減されます。

喘息発作の対処法に関するよくある質問

発作時の対処や、日常の疑問について解説します。正しい判断を行うための参考にしてください。

Q. 発作時に市販薬は使ってもいいですか?

発作時の自己判断での市販薬の使用は推奨されません。市販のせきどめや風邪薬の一部には、特に成人喘息の一部の方において、重篤な発作をもたらす「アスピリン喘息」の原因となる成分が含まれている場合があります。これはNSAIDSの投与によって発生するもので、鼻症状を合併することが多く、既往歴のみで判断することはできません。発作の防止や治療には、必ず医師から処方された薬を使用しましょう。

Q. 発作が治まったら病院に行かなくても大丈夫ですか?

発作が治まったように感じても、気道の炎症は続いていることが多くあります。症状が落ち着いているときでも、自分の判断で受診をやめず、定期的に通院を続けることが発作予防につながります。医療機関では、呼吸機能検査(スパイロメトリーなど)や質問票を用いた評価を行い、症状が隠れていないかをチェックすることができます。

Q. 運動中に発作が起きたらどうすればよいですか?

運動中に発作が起きた場合は、すぐに運動を中断して安静にします。運動誘発性喘息の傾向がある場合は、主治医と相談して適した運動方法や頻度、運動前の薬剤の使用について決めておくのがよいでしょう。日頃からは無理のない範囲で軽いウォーキングやストレッチなどを取り入れるようにしてください。

まとめ

喘息発作は、起こってから対処するのではなく、起こさないように日頃から自己管理を行うことが何よりも大切です。万が一の発作時には、まずは自分や家族が落ち着いて、症状の重症度を見極めたうえで、適切な姿勢や薬の使用のステップを踏んでください。幼児やご自身の健康を守るため、日常の環境整備や医師との喘息アクションプランの作成を進めておくと、日々の生活をより安心して過ごすことができます。

本記事は一般的な情報の提供を目的としています。詳しい診療内容・費用に関しては当サイトのページをご参照ください